プレイングPM・IT戦略
プレイングPMとは何か。考えるITコンサル、決めるCIO、動かすPM
公開日: 更新日: 著者:内海 悠人(Mac-bc株式会社 代表)

結論
プレイングPMとは、プレイングマネージャーとプロジェクトマネージャーを合わせた言葉です。私はこれを、考えるITコンサル、決めるCIO(会社のITの責任者)、動かすPMの3つの役割を担う働き方と定義しています。
経営の側で考えて決めることと、現場に入ってプロジェクトを動かすことを、別々の人に分けずに引き受ける。そして、その3役を、一人でも、仕組みでも、チームでも担えるようにする。これが、Mac-bcの考えるプレイングPMです。
Mac-bc株式会社の代表の内海悠人です。私はIT業界で12年以上、SE(システムエンジニア)、営業、コンサルタント、マネージャーと立場を変えながら、120件以上のプロジェクトに関わってきました(代表の実績)。この記事では、私が自分の働き方につけた「プレイングPM」という言葉の意味を、これまでの仕事と一緒に説明します。
プレイングPMという言葉の成り立ち
プレイングマネージャーと、プロジェクトマネージャー
プレイングマネージャーは、チームをまとめながら、自分も現場で仕事をする人のことです。もとはスポーツの言葉で、監督をしながら選手として試合にも出る人を指していました。
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクトの計画を立て、進み具合や予算、課題を管理して、目標までたどり着かせる人です。
この2つを合わせたのが、プレイングPMです。私の中では、マネージャーの側が「経営」、プレイングの側が「現場」に当たります。経営と現場の両方に立つ人、という意味を込めています。
役割を一つに絞れなかった
この言葉を使い始めたのは、自分の仕事を一言で説明できなかったからです。
最初の仕事は、区役所向けの住民税やマイナンバー関連のシステムをつくるSEでした。要件を決めるところから、開発、保守、法改正への対応まで担当しました。次の会社では、営業として100社ほどを受け持ちながら、Webマーケティングや自社アプリのPM、導入先での研修の講師もしていました。その後、BI(データを集計して見える化するツール)やデータ基盤(会社のデータを集めて整える仕組み)のコンサルタントとして8年ほど働き、マネージャーを経て、独立しています。
コンサルタントになってからは、ほとんどの案件を一人で担当していました。営業やプリセールス(技術の面から営業を支える役割)から、プロジェクトの立ち上げ、要件定義(何を作るかを決める工程)、開発、教育、運用保守まで。私の担当した導入案件では、それが基本の形でした。
自分でも、役割を一つに絞るのが苦手だったんだと思います。営業として話を聞いていると、どう作るのかが気になる。手を動かしていると、これで経営の課題が本当に解決するのかが気になる。データを分析していても、この数字が現場で使われ続けるのかまで見届けたくなる。気になったら調べずにいられない性分で、気づけばプロジェクトのほぼすべての工程を、自分の手と目で経験していました。
以前の定義から、変えたこと
この記事の以前の版では、プレイングPMを「管理と実行を一人で兼ねるPM」と書いていました。今は、その定義を変えています。
一人で兼ねる、と言い切ると、私がいないと回らない形になってしまうからです。私自身は自分で動きますが、私が入らない場合でもプロジェクトが動く仕組みをつくり、同じように動ける人を集めて、チームにしていきたいと考えています。その考えを入れたのが、今の定義です。
3つの役割:考える、決める、動かす
考えるITコンサル
1つ目は、考える役割です。何のシステムを入れるか、どのツールを使うかから考えるのはやめました。経営にとって何が良くなれば成功なのか、そこから考えます。
考えるといっても、きれいな提案書をつくることが目的ではありません。ITやAIを入れてもうまくいかない時、原因はたいてい、業務の流れとデータの持ち方にあります。だから、まずそこを見ます。私が得意なのも、業務とデータです。
例えば、AIとVRの製品を扱うIT・クリエイティブ産業の会社の支援では、プリセールス兼コンサルタントとして入り、製品の市場調査や営業戦略づくり、商談の場での技術的な質疑応答を担当しました。その中で、私は「営業を広げるより先に、製品の基本機能の開発と安定化を優先した方がいい」と提言しています。製品の成熟度を見たうえでの判断です。
別のIT企業では、Excelや情報共有ツール、顧客管理ツールがばらばらに使われていました。PMが足りず、誰がどの仕事を抱えているかも把握できていない状態です。ここでは、新しいシステムを入れる前に、関係者に課題を聞いて棚卸しし、ツールのつなぎ方と業務の流れ全体を見直す案をつくりました。
決めるCIO
2つ目は、決める役割です。CIOは、会社のITの方針と投資を決める役員のことです。
最初にお断りしておくと、私はどこかの会社でCIOという役職に就いたことはありません。外部の立場で、最後に決めるのはお客様の経営者です。
では、私の「決める」は何か。経営者が決められる状態をつくって、決めることを先送りさせないことです。選択肢を2つか3つに絞り、それぞれの費用と効果、リスクを並べ、私ならどれを選ぶかまで言います。決めるための材料がそろっていないと、会議は何度開いても結論が出ません。
小売業の会社では、4つのBIツールを比べ、導入の前に実際に検証してから、どれを入れるかを決めてもらいました。資料の比較だけで決めず、実際に動かして確かめてから選ぶ形です。
ツールを選ぶ場面では、お金の話も避けません。Mac-bcは、IT企業から紹介料を受け取ることがあります。その場合は、比べ始める前にお客様に伝え、その一部をお客様に還元するか、Mac-bcの料金から割り引きます。比べる基準は、紹介料とは関係なく決めます。今のツールを使い続けるのが一番良いなら、そうお伝えします。
動かすPM
3つ目は、動かす役割です。決まったことを、形になるまで前に進めます。
総合重工業のグループ会社の案件がわかりやすい例です。親会社には、別の会社が導入した分析ツールがありましたが、レポートの開発が止まっていました。レポートを充実させたかった親会社がメーカー(ツールを作っている会社)に相談し、メーカーから当時の私の会社に紹介があって、私はプリセールスとして同行しました。
受注した後は、止まっていた開発を動かすところから始め、データの整備、レポートの開発、データの分析、社内への引き継ぎまでを担当しました。そこからライセンスの切り替えや運用保守の契約につながり、子会社の紹介も受けています。
子会社では、導入したいのに進められずにいた状態から、営業、導入、サポート、研修までを担当しました。4つの部署の間で調整し、クラウド(インターネット上の環境)に環境をつくって、データの見える化とレポートづくりまで進めています。最終的に、利用は4部門以上に広がり、ライセンスの数(ツールを使える人の数)は導入当初の約3倍になりました。
途中から入って、止まったプロジェクトを立て直す役が、私にはよく回ってきます。ただ、立て直しが得意です、とは言いません。うまくいかずに途中で抜けることになる場合もあるからです。
ITコンサル、CIO、PM、プレイングマネージャーとの違い
比べると、こうなります
| 主な立場 | 主な仕事 | 仕事が終わる所 | |
|---|---|---|---|
| ITコンサル | 社外 | 課題を整理し、方針や計画を提案する | 提案や計画を出した時 |
| CIO | 社内の役員 | 会社のITの方針と投資を決め、その結果を負う | 役職にある間ずっと |
| PM | 社内または社外 | 決まった計画どおりにプロジェクトを進める | プロジェクトが終わった時 |
| PMO(プロジェクトの管理を支える役割) | 社内または社外 | PMや複数のプロジェクトを、管理の面から支える | 支援の期間が終わった時 |
| プレイングマネージャー | 社内 | チームをまとめながら、自分も現場で働く | 決まりはない |
| プレイングPM | 社外(Mac-bcの場合) | 考える、決める、動かすの3役を担い、最後に仕組みと人を残す | 自分たちで回せる状態になった時 |
一般的な役割の分け方を、私なりに整理したものです。会社や案件によって、実際の線引きは変わります。
普通のPMとの一番の違いは、仕事が始まる位置です。普通のPMは、何をつくるかが決まった後から入ることが多い。プレイングPMは、何をつくるか、そもそもつくるべきかを考え、決めるところから入ります。そして、決めた本人として、現場まで降りていきます。
「PMが作業をするのは良くない」という考え方について
IT業界には、PMが自分で作業に追われるのは、プロジェクトがうまくいっていない印だ、という考え方があります。PMは管理に集中し、作業は担当者に任せるべきだ、という意見です。
私は、この考え方の半分には賛成です。人も役割もそろった大きなプロジェクトなら、PMが作業を抱えるのは確かに危うい。全体を見る人がいなくなるからです。
ただ、私がよく関わるのは、IT責任者がいない中堅・中小企業や、途中で止まってしまったプロジェクトです。そういう場では、管理だけをする人を一人足しても、プロジェクトは動きません。考える人、決める人、動かす人の間がつながっていないことが、止まっている原因だからです。
それに、プレイングPMの「プレイング」は、作業を引き受けるという意味ではありません。考える、決める、動かすの3つの役割を、自分の仕事として担うという意味です。手を動かすのは、それが一番早く前に進む時だけです。
3つの役割が分かれると、プロジェクトは止まる
これまで関わってきたプロジェクトを振り返ると、止まる理由の多くは、技術力の不足ではありませんでした。役割と役割の間に、誰も立っていないことです。
止まり方には、大きく3つの形があります。
| 止まり方 | 起きていること |
|---|---|
| 考えた後に止まる | 提案や計画は出たのに、誰も決めない |
| 決めた後に止まる | 経営は決めたのに、現場に具体的な指示が届かない |
| 動いた後に止まる | 現場は動いているのに、最初の目的とずれていく |
エネルギー業の会社の案件では、2つ目と3つ目が重なっていました。最初の関係者がいなくなり、要件、約束事、メーカーの説明が食い違ったまま、プロジェクトが進んでいたんです。
私は途中から、営業とPMを兼ねて入りました。まず状況と課題を整理し、3社の間で話し合って、落としどころを提案しました。営業や価格の話も整理し直し、スケジュールは大きく組み直しています。そのうえで、ツールの導入と開発を進め、その契約の期間を担当しました。立て直した後に、お客様の責任者に経緯を説明したところ、同じツールを導入していた親会社と関連会社の情報システムの責任者を紹介していただきました。
詳しい経緯は、別の記事に書いています。
関連する記事:プロジェクトが止まった時に、経営者がまず確認すること
経営と現場の間、提案と実装の間、社内と社外の間に、橋を架けられる人がいないだけで、プロジェクトは簡単に迷子になります。逆に、その間に立てる人が一人いるだけで、プロジェクトは前に進み始める。気づいたら間に立っていた、というより、間に立ちたくてそこに居続けてきた、というのが、私の場合は近いと思います。
途中から入ったプロジェクトで、私が最初にやっていることは、別の記事にまとめています。
関連する記事:混乱したプロジェクトに入って最初にやる3つのこと
3役を担う時の進め方
新しい会社に関わる時は、知る、決める、動かす、残すの順で進めます。
知る、決める
最初の約1か月で、今の状態を把握し、ITの方針と3年分のロードマップ(何を、いつ、どの順で進めるかの計画)をつくります。3年のうち、直近の1年は具体的に、その先は大まかに書きます。3年より先は、ITもAIも変わりすぎて、細かく決めても役に立たないからです。
動かす
方針が決まったら、実行に入ります。ツールを選ぶ、IT企業との打ち合わせに同席する、業務の流れを整える、データの仕組みをつくる、AIを使える状態にする。何をどの順でやるかは、会社ごとに違います。
AIを使って、速くする
私は、自分の仕事にもAIを日常的に使っています。構想や詳細な設計、提案書や計画書、作業の分解表(WBS)の作成、補助金の調査、AIで動く仕組みによる作業の自動化などです。今関わっている大手のITインフラ(システムを動かす土台)の企業の案件でも、AIを使ってサーバー環境の構築用のコードを作っています。
1か月で方針とロードマップまでつくれるのも、調べものや資料づくりをAIに任せているからです。お客様の社外秘のデータは、お客様自身の環境でAIに処理させます。
残す
最後に、残します。自分たちがいなくても回る仕組みと、それを回せる人を、お客様の社内に残すことです。
私はコンサルタントだった頃、お客様向けの研修で講師も務めていました。社内で講師を務められる人は少なく、私はその数少ない一人でした。
研修は、お客様から依頼があった時に、その会社に合わせて中身を組み立てていました。対象は、大企業から中小企業まで、ツールの担当者や、日々ツールを使う人たちです。初級では基本の操作とレポートの作り方、中級ではデータのモデリング(データの持ち方の設計)や凝ったレポートの作り方、上級では管理者向けの内容を扱いました。教科書どおりの使い方だけでなく、そのお客様が導入した中身に合わせた使い方や、現場から出てくる質問への答えまで含めています。
お客様の社内への引き継ぎも、毎回の仕事でした。後輩の指導も3人担当しましたし、今の案件でも若手のメンバーの育成を手伝っています。教えることは、相手のためだけではありません。人に説明できない進め方は、仕組みとして残せないからです。
だから私は、言葉にすることを大事にしています。頭の中にある判断の基準や進め方は、言葉にしない限り、その人がいなくなれば一緒に消えてしまいます。言葉になっていれば、人に渡せますし、手順にも、チェックリストにもできます。経営と現場の間に立つ時も同じです。経営の言葉を現場の言葉に、現場の事情を経営の言葉に置き換えられなければ、話は前に進みません。
最近は、AIに仕事を任せる時にも、同じことを感じています。AIを入れたのに思ったほど速くならない時、原因の多くは、AIとの確認のやり取りにあると考えています。何を目的に、どこまで任せ、何を基準に判断してほしいのか。それが言葉になっていないから、AIが聞き返し、人が答え、また確認する。その往復に、人の時間が取られてしまうんです。
私は自分の会社でも、仕事の進め方や判断の基準、文章のルールを言葉にして、AIに渡すようにしています。言葉にしたものは、人にもAIにも、同じように渡せます。
一人でも、仕組みでも、チームでも
プレイングPMの3役は、私一人で担う形だけではありません。
| 形 | 中身 |
|---|---|
| 一人で | 私が経営と現場の両方に入り、考えて、決めて、動かす |
| 仕組みで | 進め方の型、チェックリスト、AIによる自動化で、私がいなくても前に進む状態をつくる |
| チームで | 案件ごとに、外部のパートナーと体制を組んで進める |
独立する前から、自分だけで対応できない所は、ビジネスパートナー(一緒に仕事をする協力会社)や他の会社と組んだり、業務委託の契約を結んだりして、最後まで進めてきました。これは今も変わりません。
今は、案件ごとに外部のパートナーと体制を組みながら、調べものや資料づくりの多くをAIに任せています。いずれは、同じように3役を担える人を増やし、チームにしていきたいと考えています。
プレイングPMが合う会社、合わない会社
合う会社
- 社内にIT責任者がいない中堅・中小企業
- DX(デジタルの力で、仕事や事業のやり方を変えること)やAIの担当を任されたが、何から始めればいいか分からない
- ツールやIT企業を選ぶ場面で、比べる基準が分からない
- IT企業との打ち合わせで、話がかみ合わない
- 途中で止まってしまったプロジェクトがある
合わない会社
正直に言うと、プレイングPMが合わない会社もあります。
人も役割もそろった大きなプロジェクトなら、私が3役を担う必要はありません。それぞれの専門家がいれば十分です。また、「管理だけをしてほしい」とはっきり決まっている場合や、今のやり方を変えたくない組織では、私の動き方は合わないと思います。
社内にITに詳しい人がいて、方向性も決まっているなら、継続した支援は要らないかもしれません。気になる点だけを、1時間のスポット相談で確かめる方法もあります。
よくある質問
プレイングマネージャーとは、どう違うのですか
プレイングマネージャーは、チームをまとめながら自分も現場で働く人のことで、主に社内の役職を指します。プレイングPMは、その考え方をITのプロジェクトに当てはめ、考えるITコンサル、決めるCIO、動かすPMの3役を担う働き方です。Mac-bcでは、社外の立場からお客様のITの方針とプロジェクトに入ります。
全部を一人でやるのですか
一人で担うこともありますが、それだけではありません。案件によっては外部のパートナーと体制を組み、進め方の型やAIによる自動化も使います。最後は、お客様の社内で回せる状態にすることを目指します。
社内にIT担当者がいなくても、相談できますか
できます。IT責任者がいない会社が、プレイングPMが一番役に立つ場面です。何から相談すればいいか分からない段階でも、30分の無料相談で、今の悩みを整理するところから始められます。

