DX・AI活用

DXを任されたら最初にやるべき3つのこと

公開日: 更新日: 著者:内海 悠人(Mac-bc株式会社 代表)

結論

DX(デジタルの力で、仕事や事業のやり方を変えること)を任されたら、最初にやることは3つです。

  1. 何のためにやるのか、目的とゴールを決める
  2. 業務とデータの今を、棚卸しする
  3. 1つの部署、1つの業務から小さく始めて、担当者と一緒に育てる

どのツールを入れるかは、この3つの後に決めます。ITやAIが効かない原因は、たいてい業務とデータにあります。そこを見ないままツールを選ぶと、入れたこと自体が目的になり、現場で使われないまま終わります。

Mac-bc株式会社の代表の内海悠人です。IT業界で12年以上、120件以上のプロジェクトに関わってきました(代表の実績)。この記事は、DXを任された担当者の方に向けて書いています。DXを進めたい経営者の方にも、担当者に何を任せればいいかの目安として読んでいただけると思います。

DXとIT化は、何が違うのか

最初に、言葉をそろえておきます。

IT化は、道具を入れることです。紙の申請をシステムに置き換える。Excelの集計を、ツールに置き換える。DXは、ITを使って、仕事や事業のやり方を変えることです。

この違いが分かっていないと、DXを任された時に、まず道具を探し始めてしまいます。道具を入れることが、DXの入口になる場合はもちろんあります。ただ、道具だけ入れても、仕事のやり方が変わらなければ、手間が少し減って終わりです。

だから最初に、何のために、何を変えるのかを決めます。

1つ目:目的とゴールを決める

DXを任されると、つい「まず何のツールを入れようか」と考えます。「とりあえずAIツールを入れてみたい」「話題のシステムを入れたい」。その気持ちは分かります。

けれど、その前にやることがあります。会社の中期と短期の計画を確かめ、DXで何を目指すのかをはっきりさせることです。売上を伸ばすのか、コストを下げるのか、新しい事業を始めるのか、働き方を変えるのか。ここが決まっていないと、途中で「これは何のためにやっているんだっけ」と迷子になります。

計画が言葉になっていない時

中期と短期の計画が、まだ文書になっていない会社もあります。その場合は、DXを進める前に、経営者と一緒に、次の問いを1つずつ言葉にしていきます。

  1. 3年後、会社はどうなっていたいか
  2. その中で、DXは何に一番効くはずか(売上、利益、時間)
  3. 今期と来期で、どこまで進んでいれば「進んでいる」と言えるか

私は、ITのロードマップを3年でつくり、直近の1年は具体的な行動まで落とし込むようにしています。3年より先は、ITもAIも変わりすぎて、細かく決めても役に立ちにくいからです。逆に、1年分しか見ないと、目の前の作業を並べただけの計画になります。

成果の物差しを、先に決める

ゴールと一緒に決めておきたいのが、何をもって成果とするかです。売上なのか、利益なのか、かかる時間なのか。

物差しが無いまま始めると、半年後に「で、何が良くなったの」と聞かれて、答えられません。答えられなければ、次の予算も、社内の協力も取りにくくなります。担当者を守るためにも、物差しは最初に決めておきます。

2つ目:業務とデータの今を、棚卸しする

目的が決まったら、次は今の状態を棚卸しします。ここが、一番飛ばされやすく、一番効く所です。

業務とデータを見る

見るのは、業務の流れとデータの持ち方です。

  • 業務がどんな流れで回っていて、どこで手作業が発生しているか
  • データはどこにあって、誰が、どの形で持っているか
  • 同じ数字が、部署ごとに違う形で管理されていないか

ここを見ずにツールを入れると、ばらばらのデータを、ばらばらのまま新しいツールに移すことになります。見た目は新しくなっても、数字が合わない、探すのに時間がかかる、という困りごとは残ります。

医療機関の支援では、経営のデータ(目標や指標)と、看護日報のデータを見える化しました。看護日報は、チェック項目を分析し、備考に書かれたコメントからキーワードを拾えるようにしています。そのうえで、経営会議や管理部門の会議の資料を、データ分析のレポートから自動で作れるようにしました。業務の中にすでにあったデータを、会議で使える形に整えた例です。

経営、管理職、現場の声を集める

業務とデータを見るのと一緒に、社内の声を集めます。経営者、管理職、現場のそれぞれに話を聞きます。話を聞く場を設けても、アンケートでも構いません。

  1. どんな業務を楽にできたらいいか(思いつくまま、まず全部)
  2. すでに検討していたツールや、気になっている会社
  3. それぞれの層で、誰がキーマン(話をまとめる中心の人)になりそうか

この段階では、答えを絞り込みません。経営者が見ている課題と、現場が感じている課題は、しばしば違います。両方を集めて、初めて全体が見えてきます。

経営だけで決めて、現場に降ろさない

経営だけで方針を決めて、現場には決まったこととして伝える。この進め方をすると、現場には「勝手に決められた」という気持ちが残り、使い始めてからも協力が得られにくくなります。DXは、現場で使われて初めて意味を持ちます。

相手によって、聞く内容や関わり方を変えることも大事です。その進め方は、別の記事に書いています。

関連する記事:混乱したプロジェクトに入って最初にやる3つのこと

3つ目:小さく始めて、担当者と一緒に育てる

1つ目で決めたゴールと、2つ目で棚卸しした今の状態を照らし合わせ、効果が出やすく、業務の流れに合いそうな所から始めます。

1つの部署、1つの業務から

最初から全社を変えようとはしません。まず1つの部署、1つの業務に絞って試し、効果を確かめてから広げます。

いきなり全部署に新しいツールを入れると、うまくいかなかった時の影響が大きく、現場の反発も強くなります。小さく始めれば、失敗しても傷は小さく済みます。うまくいけば、その結果が、次に広げる時の一番の説得材料になります。

総合重工業の会社の支援では、まず親会社で、止まっていたレポートの開発を動かし、形にしました。その立て直しが評価されて、子会社、関連会社へと広がっています。結果として、利用は4部門以上、ライセンスの数(ツールを使える人の数)は導入当初の約3倍になりました。1か所で形にしたことが、広がるきっかけになった例です。

担当者と一緒に手を動かす

もう1つ大事にしているのが、DXの担当者と一緒に動くことです。

外の人がツールを入れて終わり、にはしません。担当者に任せきりにもしないし、外の人が全部やってしまうこともしない。一緒に手を動かしながら、担当者ができることを少しずつ増やしていきます。DXは、入れたら終わりではなく、育て続けるものだからです。

支援が終わった後も、社内でDXを回し続けられること。自分たちがいなくても回る仕組みと、それを回せる人を残すこと。これが、外から関わる私の仕事のゴールです。

よくある失敗は、順番を飛ばすこと

DXでよく見かける失敗は、次の4つです。

よくある失敗 飛ばしている順番
ツールを選ぶところから入り、目的が後付けになる 目的とゴールを決める前に、ツールを選んでいる
業務とデータを見ずに、ツールを入れる 今の状態を棚卸しする前に、入れている
経営だけで決めて、現場に降ろす 現場の声を聞く前に、決めている
最初から全社で大きく変えようとする 小さく試す前に、大きく広げている

経営者や上司への説明に、入れておくこと

DXの担当者が苦労しやすいのが、経営者や上司への説明です。説明の資料に入れておきたいのは、この記事の3つの手順で決めたことです。

項目 中身
目的 何のためにやるのか。会社の計画のどこにつながるのか
成果の物差し 何をもって成果とするか(売上、利益、時間)
今の状態 業務とデータの棚卸しで分かったこと。困りごとと、その根っこ
最初の一歩 どの部署、どの業務から、いつまでに、何を試すか
費用とリスク かかる費用と、うまくいかなかった時に何が起きるか。どこでやめるか
3年の道筋 最初の一歩の先に、何をどの順で広げていくか

大事なのは、最初の一歩を小さくして、やめる条件まで書いておくことです。経営者が決めやすいのは、うまくいかなかった時の損が見えている提案です。「全部変えます、効果は大きいです」と言われるより、「この業務で3か月試します。費用はここまで、この数字が動かなければやめます」と言われる方が、ずっと決めやすい。

AIは、どこから使えばいいか

DXと一緒に、AIをどう使うかを求められている担当者の方も多いと思います。AIも、順番は同じです。何のために使うのかを決め、業務とデータを整えてから入れる。整っていないデータの上では、AIは思ったように働きません。

一方で、仕事の進め方を速くするためなら、AIはすぐにでも使えます。議事録の整理、社内説明の資料の下書き、他社の事例の調べもの。担当者の方は、こうした自分の手元の仕事から使い始めると、AIの得意なことと苦手なことが、体で分かってきます。

私自身も、構想や設計、提案書や計画書、作業の分解表の作成、補助金の調査、作業の自動化などに、AIを日常的に使っています。

社内で進めるか、外の力を借りるか

ここまでの3つは、社内でも進められます。社内に、業務とデータの両方が分かる人がいて、経営と現場の間に立てるなら、まずは社内で進めるのがいいと思います。

一方で、外の力を借りた方が早い場面もあります。

  • 社内に、DXやITに詳しい人がいない
  • 担当者が一人で任されていて、相談できる相手がいない
  • 経営者や上司に説明するための材料が、まとまらない
  • ツールやIT企業を選ぶ基準が分からない

Mac-bcに頼む場合の進め方

Mac-bcでは、まず30分の無料相談で、今の状況と困っていることを伺います。そのうえで、次の順で進めます。

時期 やること
1〜2週目 現状の診断(業務、データ、ITの棚卸し)
3〜4週目 ロードマップ(目的と進める順番を決め、3年の計画にする。直近の1年は具体的な行動まで)
その後 実行(小さく始めて広げる)。必要に応じて決めていただけます

診断とロードマップまでを約1か月で進められるのは、調べものや資料づくりにAIを使っているからです。社外秘のデータは、お客様ご自身の環境でAIを使って処理していただきます。経営者や上司に説明するための資料づくりも、一緒に行います。

ツールやIT企業を選ぶ段階になったら、選び方の基準づくりや、IT企業との打ち合わせへの同席もできます。

よくある質問

DXの担当になったばかりで、専門知識がありません。進められますか

進められます。専門知識は、後から身につけていけば十分です。最初に必要なのは、専門知識よりも、社内の今の状態を正しくつかむことです。この記事の3つの順番を守っていれば、知識が足りない所は、必要に応じて外の力を借りながら補えます。

経営者がDXにあまり関心を持ってくれません。どうすればいいですか

DXが会社の計画とどうつながるのかを、具体的な言葉で示すところから始めてみてください。「DXをやりましょう」と言うより、「このままだとこういうリスクがあり、DXでこう良くなる」と、経営者が気にしていること(売上、コスト、リスク)に結びつけて話す方が伝わります。

予算が限られていても、DXは進められますか

進められます。予算が限られているなら、なおさら小さく始める考え方が役に立ちます。最初から大きく投資せず、小さく始めて効果を確かめ、必要な所に予算を足していく方が、限られた予算を無駄なく使えます。

この記事を書いた人内海 悠人(うつみ ゆうと)Mac-bc株式会社 代表取締役/ITのプレイングPM官公庁向けシステムのSEから、営業、BI・データ基盤のコンサルタント、マネージャーを経て独立。IT業界12年以上、120件以上・15業種以上のプロジェクトに関わる(代表の実績)。得意なのは、業務とデータ。プロフィールを見る

DXを任されて、何から始めればいいか迷っている方へ。

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